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●CAD/CAMクラウンの適合について考える


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CAD/CAMクラウンの適合について考える

 

皆様は普段、CAD CAMを臨床で活用されておりますでしょうか?

 

「いよいよCAD CAMの時代が来る!」と持て囃されてから早10年。

 

今となっては、とりわけインプラント補綴において必要不可欠と

呼ばれる存在にまでなってしまいました。

 

 

そんなCAD CAMによって製作されたクラウンですが、

広義では「切削加工クラウン」と定義するのが自然なのではないかと思います。

 

 

ところがこの切削加工クラウン、

支台歯に対する適合面の問題をしばしば耳にします。

 

たしかに、この10年でスキャン精度および切削精度は飛躍的に向上しました。

肉眼では納品可能なレベルまで適合するケースも多く見られるようになってきました。

 

 

しかしそれでも、多くの場合は鋳造クラウンと比べれば

その適合精度が大きく劣っていることは明白です。

 

 

何故なのでしょう?

 

 

普通に考えて、機械で削り出したものよりも

人間の手で作った物の方が精度面では劣っていそうなものです。

 

 

例えば画用紙に、サイズの全く等しい正円を3個描けと言われ、

正確に描ける人がどれだけ居るでしょうか?



少なくとも私には無理な話です。

でも、機械にやらせればこれは簡単ですよね?

 

適当なペイントソフトを使って正円ツールで円を描き、

それを3回コピペすればいいだけです。

 

 

早い話、機械(CAD/CAM)は寸法精度および

その再現性という点においては圧倒的優位性を誇ります。

 

だからこそインプラント補綴において、

人力加工を優に凌駕する精度を発揮するのです。

 

 

なのになぜ、

クラウン補綴においては未だとして鋳造クラウンに後れを取っているのでしょう。

 

 

 

結論から言えば、加工精度に大きな問題があるわけではないのです。


支台歯のスキャン精度に大きな問題があるのです。

 

 

切削バーの種類における加工範囲の制限もありますが、

一番はスキャン工程における鋭縁の再現性が低いことに起因します。

 

支台歯のマージン部は基本的にシャープであることが理想とされます。

 

ところが、教科書通りに支台歯形成時にマージンをシャープに仕上げてしまうと、

その部位がスキャン不良を起こしてしまうのです。

 

 

かといって曖昧なマージンにしてしまえば

技工士サイドでどこがマージンラインかわからなくなってしまいます。

 

そもそもスキャン時にどこがマージンか検出できないといったエラーをも誘発するでしょう。

 

 

 

ではどうすればいいのか?

 

 

ええ、どうしようもありません。

 

 

つまり、

切削加工クラウンは理論上マージンが適合しないものと考えた方が良いのです。

 

鋭縁の再現不良はSTLデータと光学スキャンの仕組みによって

引き起こされる現象なのですが・・・・・・

 

これに関しては山本眞先生が素晴らしい論文を発表されております。

また、このマージン不適に対する唯一の解決法もご提案されておりますので、

下記、論文を是非ご覧いただければ幸いです。

 

「山本眞論文:CAD/CAMシステムによるマージンの適合性問題への挑戦

「マージン延長法」による支台歯スキャンの理論と効果〜

クインテッセンス出版出版、QDT2017年5月、東京」   

 

 

 

反面、鋳造クラウンの場合の適合不良は寸法精度に起因します。

 

つまり、支台歯の大きさとクラウンの大きさが一致していないから

適合しなくなるのです。

 

(支台歯にアンダーカットをスルーしたり、

そもそもワックスアップの時点で変形しているようなものは話が別ですが)

こうした場合、クラウンの軸面部を削合することで支台歯に適合させる事が可能です。

 

 

マージン部を削ってしまうと直ちに間隙が生まれてしまうため、

マージン部の調整は苦肉の策の最終手段とされています。

 

 

ところが切削加工クラウンの場合、

前述の通り鋭縁に対してはスキャン不良が頻発します。


マージン部のスキャンが正確に行えないのですから、

切削加工クラウンが支台歯に対して最初にぶつかってくるのは

殆どの場合がマージン部になります。

 

支台歯に鋭縁があればそこから干渉することもありますし、

マージンにジャンプがあった日には著しい適合不良を招きます。

 

 

切削加工クラウンの内面調整においてまず行うべきは、

マージン部と支台歯の鋭縁部です。

 

誤って切削加工クラウンの軸面を最初に調整してしまった場合、

かえって適合不良が加速するばかりで、適合精度が改善しないのです。

 

切削加工クラウンと鋳造クラウンの最大の相違点がここなのです。

 

 

 

簡単にまとめると

 

鋳造クラウンは同一形態だが寸法精度の異なるものを

調整して適合させるのでまず軸面から調整を試みる

 

切削加工クラウンは寸法精度にすぐれるが鋭縁部の形態が全く異なるものを

人力で適合させるので、まずはマージン部と鋭縁部から調整を試みる

 

といった違いになります。

 

 

 

別の機会にお話したいと思いますが、

マージン調整を試みない切削加工クラウンは

バイト不良を招く可能性が大変高いと思っています。

 

とりわけ口腔内においてはわずかな不適合が直ちにバイト不良を誘発します。

 

 

鋳造クラウンと切削加工クラウンの適合精度に対する相違点に関しては、

覚えておいて損はなさそうです。

 

 

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            ライター 瀬 直

 


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