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「ゼロから始めるステイン講座 W」
透明だけど透明感がない? モノリシックセラミックスについての考察 A
「透明感」には一定のルールがある 先ほどのガラスの地球儀の写真ですが、 実際に透明な物体ではなくとも、 透明感に溢れる表現が可能であることは ご理解頂けたと思います。
では先ほどの地球儀の写真から、 日本列島あたりを切り抜くとどうなるでしょう?
・・・・・・どうでしょうか。
日本海や太平洋、透明感溢れてみえますか? 当然、見えませんよね。
ただ切り抜いて左に移動させただけなのに、 何故透明感が無くなってしまったのでしょうか? 今度はこちらの画像をご覧ください。
瑞々しく見えていることかと思います。
それでは、この画像をスタンプツールで加工し、 水面の泡や小波をつぶしていくことで 下地の色のみにしてみましょう。 だいぶ雑な加工ですが、どうでしょう。 一気に透明感が無くなって見えませんか?
単純にボケてしまったことが原因でしょうか。
透明感は失われないようです。
透明感を表現するために、 一定したルールの必要性が垣間見えます。
「透明感」の表現には対比効果、 額縁効果、表面性状の付与などが必要
ステイン講座Uでも触れましたが、外部ステイン法のキモは、 @本来半透明で透明感に乏しいものを A補色による対比効果や光の吸収特性等を利用し B局所的に透明に見せかけることにより ことにあります。
先ほどの地球儀の写真を分析してみましょう。
順を追って解説していきます。
●周囲と比較して明度の低い箇所 高透過性とは、光が反射しにくい状態を指します。 光が反射せず突き抜けるわけですから、 当然明度は低い状態になります。
逆に言えば、暗く見える所は透明に見えやすいのです。
●ハレーション、表面性状、表面付着物 透明な物体は、表面に浮遊物やハレーションがあることで 初めて透明であると視認できます。
光を一切反射しない、本当に透明なものは そもそも視認することができません。
こちらの画像をご覧ください。 窓ガラスに張り付いたバッタです。 ※虫が苦手な方のためにモザイクをかけました
窓ガラスの存在を認識できないと思います。
続いてこちらの画像も同様です。
ただの暗く真っ青な画像になってしまうでしょう。
どちらの画像も透明層の上に不透明なもの、 つまり光の反射が存在していることで 透明層を認識できているのです。
ハレーションも光の反射です。 また、表面性状が複雑化することで 光が乱反射し、ハレーションが複雑化します。
先ほどの海辺の写真における小波や 泡立って白くなっている部分がこれに該当します。
透明感の表現においては、表面性状次第で 効果が増大可能であると捉えて良いでしょう。
●額縁効果 額縁効果も透明感の表現に欠かせない存在です。 上記の表面性状や表面付着物と併せることで 強力な効果を発揮します。
こちらの窓ガラスのイラストをご覧ください。
透明感どころか、そもそも窓ガラスであることさえ 認識できません。
でもまだ透明感がありません。
窓ガラスっぽく見えてきました。
「額縁」ですが、先の地球儀の写真を鑑みても、 高い透明感を表現する上で 額縁効果が必須であることが分かります。
●対比効果 透明感の表現には対比効果も需要です。
光の透過する暗い部分と、 光を反射する明るい部分の境界をはっきりさせて メリハリをつけることで、透明感を大きく表現できます。
境界がぼけて移行的になってしまうと、 一気に透明感を失います。
境界線をひたすらぼかしてみましょう。
これはこれでなんだか綺麗な気もしますが、 透明感が乏しくなった印象を受けると思います。
それでもまだ最低限透明感を保っているのは、 境界がぼけても額縁効果が残っているからです。
加工前の写真は対比効果によって、 強い透明感を得られていたことがわかります。
以上です。 如何でしたでしょうか。
実際に透明感溢れる写真を加工し、 透明感溢れるものにはどの様な特徴があるのかを 把握できたのではないかと思います。
今回はここまでです。
次回は、 『ゼロから始めるステイン講座 X』
モノリシックセラミックスについての考察B
に続きます。
ライター 瀬 直
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