「ゼロから始めるステイン講座 X」 |
「ゼロから始めるステイン講座 X」
前回のブログでは、たとえ透明性の高い物体でも透明感があるとは限らず、 透明感を発揮するにはいくつかの法則性があることがわかりました。
では、実際どのようにしたらその法則性を巧く取り入れ、 透明感を表現できるのでしょう。
その前にまず、今回は色彩学の基本である 「加法混色」と「減法混色」 についてお話ししたいと思います。
●「加法混色」 〜補綴にはほとんど関係がないかも?〜
加法混色をざっくり言うなら、赤と緑の光を合体させると黄色い光になるよ! 更に青い光まで混ぜると白色光になるよ!といった概念です。
加法混色における光の三原色は赤、青、緑で、この三つの色を使うことで 全ての色が再現可能であるとされています。
模式図としてはこんな感じですね。 赤と青が混ざったところはマゼンタになり、 青と緑が混ざったところはシアンになり、 赤と緑が混ざったところはイエローになり、 赤青緑が混ざったところは白くなります。
ここで注意が必要なのが、加法混色は発光体や光線そのものの概念です。
分かりやすく言えば、 赤いスポットライトと青いスポットライトを重ねて照射すると、マゼンタ色の照射になるよ! といったところです。
簡単に動画にしてみました。
特徴として、光線そのものを重ねていくので 混色することで明度が上がります。
そういえば、TVやスマホの画面も発光体ですね?これらも加法混色の原理を応用しています。
実は白いLEDも、三原色の発光体を三つ合わせることで実現していたりします。
ただし、
歯冠補綴において発光体を製作する機会は恐らくありませんので、 加法混色は「歯科には関係のない概念」と割り切ってしまっても良いかと思います。
(厳密に言えば、環境光を視野に入れると 全く無関係でもなさそうですが…)
輝く美しさのクラウンは需要がありますが、 本当の意味で光り輝くクラウンはあんまり需要がなさそうです。
●「減法混色」 〜絵具混ぜまくったら黒くなった話〜
減法混色は「光の吸収」の概念です。「反射光と透過光」の概念とも言えます。
分かりやすく絵具重ね塗り動画を作ってみました。 見ての通り、 どんどん明度が落ちていき、最後は真っ黒になってしまうことが分かります。
ここまでは体感として非常に分かりやすいところだと思いますが、
実際、加法混色と何がどう違うのか、イマイチピンとこない方も居るかと思います。
そもそもなんで暗くなるわけ? 一例として、比較画像を作ってみました。 加法混色と減法混色の比較
減法混色の基本は、 元々あった色(光)にフィルターを重ねて色を変化させていくもの だと捉えると理解しやすいでしょう。
光源(被反射体)をフィルターで覆ってしまうわけですから、 若干光量が低減するのは想像に難くありません。
なるほど、このように考えると明度低下も納得できるかもしれません。
光源体に直接フィルターを被せるのも、 画用紙に塗料を塗るのも、実は考え方として同様です。
このあたり、もう少し突き詰めてお話したいところですね。
ただ今回はあくまで加法混色と減法混色の差異についてのお話ですので、 ひとまずはここまでです。
次回は 吸収と反射をより理解し、実践に活かす「補色」という概念について お話ししたいと思います。
ライター 瀬 直
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