●天然歯の色調理論 01 〜可視光線とオパール効果を有するセラミックス材〜 |
1.色調について論証を行なうことは、光の特性を説くことに他ならない。
図01のような太陽光は何故にオレンジ色が生じるのか。 また、その周囲の空や海は青く観察されるのであろう?…
先ずは「光速」から考察して行こう。 これには歴史的に様々な試行錯誤を重ねた結果、やっと1676年にデンマークの天文学者、 レーマー氏が現存する数値に近い「光の速度」を算出しました。
しかし、近代まで光は瞬間的に伝わるのか、それとも有限の速さで伝わるのかは不明だった のです。
種をあかせば、光速とは「約30万km/s(正確には299,792.458km/s)=1秒間に地球を7回半回る ことができる速さ」であり、瞬間的伝播(アリストテレス等々の考え)ではなく、「運動」なのです。
そして、
「運動」である限り、必ず様々な光の特性やそのエネルギーについての理論が伴うはず……
例えば、黒い服は黒色が光を吸収するため、熱量に変換され暖かく感じるわけです。
図01 天然光の速度と周囲環境への影響
下図02は空気中の電磁波を示すものです。
左からガンマ線、]線、紫外線、可視光線、赤外線そして電波と短い波長から長い波長へ と移行します。
その中でも、ヒトの目に見えるものが、いわゆる可視光線と呼ばれているわけです。
寒色系の色を示し、緑、紫は中性色であるものの、700nmまで移行するにしたがって、 黄、オレンジ、赤を呈する暖色系の色へと変化して行きます。
図02 空気中の電磁波と可視光線 株式会社中川研究所 http://www.naka-lab.jp/vlc/aboutvlc1.html
では、上記の波長「nm」とは一体何なのであろう。
図03左上に示したとおり1nmは1/10万mm(= 1/1000µm)であり、長さの1単位を意味します。
歯牙のシェードテイキングの場合、日昼光における北側からの入射光が最も適する とされているものの、この条件が常に満たされるわけではないことは言うまでもないであろう。
太陽光線は色温度が約5,500°Kといわれているが、ドイツ工業会の光源規格では、 色見本比較に用いられる白色光を中央ヨーロッパ平均太陽光と定め、演色性が高い色温度 6,500°Kの蛍光灯「D(Daylight)65」をニュートラルな白色光と規定しています (日本もこれに倣い、同様です)。
*注意: K(ケルビン)とは?=色温度: ある光源が発している光の色を定量的な数値で表現する尺度(単位)のこと。
であり、太陽光に似た色の見え方をする照明ランプを「演色性の良い(高い)ライト」と呼びます。 図03 右下の蛍光灯は「AAA」で表され、最も演色性の高い光源なのです。
プリズムを介した光の分散: 波長が短くなるほど屈折率が大きく、これを正常分散と呼び、 可視光域で透明な物質は可視光領域で正常分散が起こります。
図03 波長の単位、プリズムによる分光スペクトルとシェードテイキング時における光
図04 日中光(青;光の短波長が散乱)&図05 夕方(オレンジ;残った光の長波長のみ観察)
2.オパール効果とは?
自然現象も上図に示した通りですが(図04〜06)、光がある種のオパール石や天然エナメル質 などの物体に入射して青や紫の光が散乱することによって、物体が青みを帯びて見える現象 のことを言います( 山本眞先生によって世界で初めて歯科界への応用がなされました )。
物体の粒子が小さい場合、光が散乱される割合は波長に反比例し、波長の短い青や紫が散乱 されやすくなるために、青みを帯びて観察されます。
そして、 その光の通過(散乱)距離が長くなった場合、朝焼けや夕焼けのように、 残りの長波長(オレンジ等)しか見えないのです。
図07a 天然オパール原石
上図(図07a)の天然オパールは二酸化ケイ素の粒子が緊密に集合したものであり、 その粒子間に生じる水で満たされた空隙が超微粒子のような配列状態となります。 水の粒子は物体の大きさとして、光の短波長よりもはるかに小さいのです。 そこに光が入射することによって、光の短波長が散乱してオパール効果が生じるわけです。
そして、天然歯のエナメル質にはハイドロキシアパタイトの微細な結晶が密に集合しているため、 同様にオパール効果が起るのです(図07b)。
天然歯においてオパール効果は、エナメル質すべての部分において観察されます。
したがって、補綴装置製作では、人工エナメル質の部分にオパール効果をもつ材料を使用する ことで自然感のある補綴装置を製作することができます(図08)。
その陶材が「Vintage 陶材」システムなのです。
上記の理論は先にも書いた如く、山本眞先生が唱えたもので、 天然歯が持つオパール効果を再現することに成功した世界初の陶材です。
陶材自体が天然歯同様のオパール効果を有することから、 これまでセラミックの築盛は3層築盛であったものが、 口腔内での審美性を2層築盛で実現できるようになったのです。
確か今を遡る1990年頃でしたが、 当時の陶材における理論を一掃する画期的なものでした。
マイスター大畠は当時、ドイツに居ましたが、氏のラボではこれまで様々に思い思いの陶材を 使用していた30名程のセラミストが一斉に「オパール陶材」に変更しました。
図07b 天然歯のオパール効果 画像提供:Shofu GmgH
図08 オパール効果を有する前装用陶材の1例 画像提供:(株)松風 Vintage MP
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