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9.色調:明度・色相・彩度って何だろう? NCC(Natural color concept)システムとは?
天然歯の色調は明度、色相と彩度が3次元的に構築されていることを先ず知って頂きたい。
我々が応用している「NCCシステム」は、天然歯の色調を「マンセルの色球=L*a*b*色空間」で表し、 色調自体を濃い、薄いで言い表すことにしました(山本眞先生により提唱された)。
図01にその「マンセルの色球」を示しますが、RGB(赤、緑、青)やCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、 ブラック)の色空間とは異なり、Lab色空間はヒトの視覚に近似するよう設計されているのです。
「L」成分値はヒトの「明度」知覚に極めて酷似します。
したがって、カラーバランス調整を正確に行うために出力曲線を a および b 成分で表現したり、 コントラストの調整のためにL成分を使ったり、、、といった利用が可能です。
Lab色空間はコンピュータディスプレイ、プリンタや人間の知覚よりも色域が広く、Lab色空間で表現した ビットマップ画像は同等精度のRGBやCMYKのビットマップ画像よりもピクセル当たりのデータ量が多く なります。
そして、マンセルの色球は元来、楕円形なのです(図02)。
図01 マンセルの色球 図02 本来のマンセルの色球(楕円形)
下図03左は「マンセルの色相環」を示しますが、これらの色相が最も彩度の強い、言い換えれば、 一番鮮やかな色相です。 最も暗い黒で明度0とし、赤道が最も鮮やかな(彩度)色相を表わすのです。
を結ぶ線(L*)に到達することによって、無彩色となるわけです(図03右)。
図03 マンセルの色相環と色の3属性(明度、色相、彩度)
そこで、日本人の天然歯の色調分布をこのマンセルの色球内にあてはめてみよう。 マンセルの色球を地球儀と想定すると、天然歯の色調分布は丁度、インド洋から見た日本列島 程に位置しています。
またその結果は、A系統のシェードが最も多く観察されるのです。
図04 マンセルの色球内におけるヒトの歯の色調分布 図05 図04の拡大図
図06 ヒトの歯牙色調における「色の濃いまたは薄い」という表現定義 図07 楕円形の中心部はA系統のシェードであり、日本人に最も多い。
図08 最も薄いAシェードはA1であり、A2→A3→A3.5→A4→Arootと色が濃くなって行きます。 図09 通常の色より暗い色はVita ClassicのC、Dで表していたが、C,Dはこのシステムに調和して
図10 上述の色調分布をプロット図で表してみたものの、、、 図11 これらを修正した陶材を「バリューマイナスAおよびR」と呼び、「VmA,VmR」と表わしています。
それでは、「色相」とはどうなのであろう。 色相は、マンセルの色球における上(地球儀の北極点)から観察することによって明確になる。
図12&13 色相上の中心部をAシェードとすれば、より黄色を帯びた領域を
図14 プロット図上でVita ClassicのC,Dシェードが如何に他の色相と調和していないかが見てとれよう。 図15 Vita ClassicのC,Dシェードを「VmA,VmR」に変換した明度と同様にプロット図上で観察しました。
このように天然歯の色調は明度、色相と彩度を3次元的に表現し、日常の臨床に活かす必要があるのです。
10.色調分析に必要とされる「2度視野」とは?
図16 水平直視=X 図17 垂直直視=◎
図16と17では、それぞれ水平比色および垂直比色を行ないました。 では、どちらが正しいシェードテイキング法に適っているのでしょう?
「色覚」を司るヒトの眼の視細胞、「錐状体」は中心窩中央部直径2mm範囲のみに集中しています。
その集中角度は2度であり、よってこれを2度視野と呼んでいます。
が最も色覚が高められる視覚領域ですが……
それは中切歯1歯分の幅径が約1cmであり、シェードガイドを歯面下にきっかり平行に位置付ける ことによって、わりあい正確な測色が可能となるわけです。
したがって、「垂直比色」が正解なのです。
シェードテイキングの平均的測色距離では、5cmの範囲で明暗(明度)を最も理想的に判断できます。
これは大概的に歯牙3〜3部に相当します。
また、これらに桿状体と錐状体の細胞絶対数(桿状体:1億3千万個、錐状体:7百万個)の差を 加味すれば、同一測色条件時の理想的測色範囲は、色覚より約5倍も広い「光覚」に有利となります。
すなわち、これは補綴装置の「明度」が色相、彩度よりも優先されることに他ならないわけです。
図18 桿状体と錐状体の中心窩からの隔たりによる細胞絶対数
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