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●『CAD/CAMは全然全自動じゃない話』


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『CAD/CAMは“全然全自動”じゃない話』

 

皆様は「CAD/CAM」をご存知でしょうか?

有体に言えば、コンピューター制御の全自動切削加工機の事です。

 

歯科業界以外でも大活躍のハイテクマシン、

これをおそらく知らない人は居ないのではないかと思います。

 

しかし、

科学の進歩には本当に驚かされますよね!

 

何がすごいかって、

ヒトが寝ている間にクラウンを勝手に削り出しておいてくれる

のです。

 


しかもテレビゲームで遊ぶ程度の操作で、誰でも簡単に扱えるのが素晴らしい。


これならとってもラクチンだし、技工士の数が減っても大丈夫ですね!

 

 

……そう思っていた時期が私にもありました。

 

 

事実、CAD/CAMは大変便利な代物です。

 

 

誰でも簡単に操作できます。


一度命令を下せば、あとは放っておくだけで命令通りに作業をしてくれます。

 

 

しかし……

 

 

肝心な咬合や排列、審美的かつ強度を兼ね備えたフレーム設計といった


「歯科技工士にしか出来ない仕事」は肩代わりしてくれないのです。

 

 

これは飛行機を無人かつ自動で飛ばせるシステムがあっても、


気流や天候といった不確定要素に対しては人間が対応しなければならないのと同様です。

 

つまり一見全自動に感じられる機械でも、


扱う人間のスキルや知識によって結果が大きく左右されるのです。

 

 

この10年でCAD/CAMは飛躍的な進化を遂げました。


難点であったスキャン精度も向上し、


より円形の細い切削バーでの加工も容易となりました。

 

 

とりわけ


インプラント嵌合部の様な「予め設計された形状」に対しては


人間の手をはるかに上回る精度を発揮し、


現代のインプラント補綴に対しては不可欠な存在となっています。

 

 

しかしながら……

 


支台歯のスキャンを伴うクラウン補綴等の切削加工においては、


鋳造体と比較し、適合精度で明確に劣っています。

 

 

そもそもジルコニアや保険適用レジンクラウンは、


削り出した直後の状態では支台歯にまるで適合していません。

 

 

肉眼では何となく合っているように見えても、


高倍率のマイクロスコープを除けばマージン部はあまりに間隙だらけです。

 

 

これを聞くと、


歯科医師の皆様は「今まで見たジルコニアはちゃんと模型に適合していたし、


口腔内でも問題なかったよ!」とおっしゃることでしょう。

 

 

しかしその適合が良さげなジルコニアの多くは、


「機械で削り出したから適合が良かった」のではなく、

 

むしろその逆…!

 

機械が大雑把に削り出したクラウンを、


歯科技工士が手間暇かけて支台歯に合うように調整し、


人力で適合させているからこそ適合しているのです。

 

 

だから

 

機械で削り出したクラウンにも関わらず、


製作した技工士によって精度が異なるのです。

 

 

患者によって異なる症状や咬合に綿密に対応していくためには、


まだまだマンパワーは必要不可欠。

 

 

生身の技工士が完全に必要なくなる頃には、


きっとドラえもんが開発されているんじゃないかなーと思います。

 

 

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                ライター 瀬 直

 

 


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