●抜歯後即時埋入即時負荷インプラント 〜初期固定の測定データの重要性〜 |
インプラント治療では失われた機能、審美そして予知性を具備するためには、 インプラント周囲組織が安定する要素が必要です。
通常、インプラント埋入後、下顎が3ヶ月間、上顎で6ヶ月間のオッセオインテグレーションを待つことが 定番となっているものの、 患者サイドは早期に物を噛め、また美しい歯を欲することは言うまでも無い事実でしょう。
「普通に咬合負荷を加えてもほとんど問題は無いよ!」」という期間は、単純に インプラント埋入後、2か月間以上と言われています。
「それでは長すぎる!」と感じる患者さんもおられるのではないでしょうか……?
そこでインプラント埋入後、1週間〜2ヶ月の治癒期間を要する「早期負荷インプラント」、または より早い、埋入直後に咬めて、美しい外観を呈する「即時負荷インプラント」の術式が確立しています。
ここでは先ず、最短の「即時負荷インプラント」術を説いて行きましょう。
「即時負荷インプラント」において最も重要な要件として、如何に強固な初期固定を達成して、 インプラント体のマイクロムーブメントを50〜150μmに抑えることができるかです。
また、それを科学的に数値上で表される必要があります。
そのためには最低限ながら…… もっとも重要な値として、「オステルISQ値」、「トルク値」、つぎに「ペリオテスト値」が挙げられます。
では、「オステルISQ値」とは? インプラントに荷重を加えられる時期を知るために、共振周波数解析装置オステルISQを使用し、 インプラント安定指数ISQ値を測定します。 昨今、モリタ社が提供している「オステルIDx」をご紹介しましょう。
「モリタ社HP: https://www.dental-plaza.com/article/osstellidx/feature/ より」
【測定手順】 1.インプラント埋入後に上図左の「スマートペグ」という金属棒を固定します。 2.オステルIDxのプローブ先端から磁気パルス発信され、スマートペグとの共振周波数が測定される。 3.オステルIDx本体に自動的に指数が表示されます。
上の表に見られるように「即時荷重」の場合、インプラント安定指数ISQ値は70以上である必要があります。 また、患者さん毎の治療リスクが早期に発見でき、治療計画を変更したり、各患者データの管理にも 役立ちます。
次のページで紹介する「抜歯後即時埋入即時負荷インプラント」の臨床例 も、下記したように 埋入後から一貫してオステルISQ値、70付近を保ち安定しています。
つぎに埋入「トルク値」ですが、 この値は「ハンドピース」や「トルクレンチ」で測定することができます。 インプラントの適正埋入トルク値は各メーカーやインプラント体の寸法にもよりますが、 大概的に25〜50Ncmの範囲内で設定されています。
ブローネマルクシステム - ノーベルバイオケア
ただし、 埋入トルク値が30Ncm未満の場合、オッセオインテグレーションを確保するためには、 4〜6ヵ月間の非荷重期間を待つことが望ましいでしょう。
また、50Ncm以上の埋入トルク値は、インプラント周囲組織(特に「骨」)に過剰な圧縮応力が生じ、 血流が不足した結果、無血管性骨壊死を起こす場合があります。
つまり、インプラントのスクリュー回転応力が強すぎても、弱すぎても望ましくないわけです。
とりわけ、 良好な即時荷重のためには、埋入トルク値40〜45Ncmが必要であると言われています。
ここで言う、N(ニュートン)とは力の単位であり、 1kgの質量を持つ物体に1m/S2の加速度を生じさせる力が1Nと定義されている。
最後に「ペリオテスト値」です。 もともと歯周組織の初期、現症の構造的変化と支台歯としての有効性の診断やペリオ治療の定期検診など 広範囲に使用されていました。
東京歯科産業株式会社 HP:
インプラントでは、Miller(臨床動揺度)指数を-8〜+9まで18段階の値に判別でき、 動揺度初期兆候の診断にも有効です。 インプラント埋入後、上部構造体が完成している場合、上部構造体の撤去時に生じやすい 歯肉退縮を回避する意味でも、インプラント安定性が容易に測定できます。
上述のしたように、最低限の「オステルISQ値」、「トルク値」、つぎに「ペリオテスト値」の科学的数値を 測定し、正確な診断に結び付けて戴けば幸いです。
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