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周知の如く、安定性ジルコニアは模倣天然ダイヤモンド(キュービックジルコニア)として用いられてきたものの、 現在の歯科用金属材料の高騰も手伝って、その優れた曲げ強度や破壊靭性の高さからヒトの口腔内に入れる 材料として用いられるようになりました。
昨今、口腔内に装着した高価なジルコニアクラウン等に破折やチッピングなどの問題がしばしば発生している ことを耳にします。
美しいジルコニアボンディングクラウンを製作するためには、粉末のジルコニア前装用陶材を液体で溶き、 天然歯に基づいて、人間の手で何層にも盛り足して、炉内真空中で900℃付近で焼き上げる必要があります。
【キュービックジルコニア】 【ジルコニアボンディングクラウンの破折】
【ジルコニアクラウンの焼成】 専門家の中でも、「ジルコニア前装用陶材とジルコニアフレームはそもそも結合していないことに起因して、 破折するのではないか!」という話題を聞き及びます。
しかし、それは事実では無く、従来のメタルセラミックス(下図一番右)よりも、ジルコニア前装用陶材 (Vintage ZR:下図一番左)とジルコニアフレームは強固に焼き付いているのです(下図参照)。
ジルコニアの比熱は大きく、急加熱、急冷すればクラウン中に応力が発生し、僅かな力で破折しやすい状態 となります。
そこで、ジルコニアクラウンをじっくり焼き上げ、ガラス転移温度近辺をゆっくり時間を掛けて冷やすこと が重要なのです。
また、脆弱なジルコニア前装用陶材の強度は徐冷することによって、若干のコントロールはできるものの、 現在はジルコニアフレーム自体の強度を高める考察が重要視され、ジルコニアフレームにおけるサポート形態 の有無が問われています。
【メタルセラミックスと同じフレーム形態によるジルコニア前装用陶材の破折】】
ジルコニアフレームは、メタルフレームや1950年代からあるアルミナフレームと比較して、高い曲げ強度や 破壊靭性を持っています。
しかし「たわむ」ということは、その上に被せた下部フレームよりは脆弱であるジルコニア前装用陶材を 破壊することに他なりません。 従来からあるアルミナフレームのほうがより曲げ強度が高いことで、決してジルコボンドの強度を 過信してはいけないのです。
およびジルコニアクラウン完成までを示した。
頬側咬合面には、約1mmの皿状の咬合力に対応するウィングを設け、唇側面(上顎の機能咬頭がある) および遠心側面(この症例では遠心側に咬合圧が掛かる)は全て無垢のジルコニアフレームへ置換する。
【サポート形態の付与】 【ワックスアップのジルコニアフレームへの置換】
【ジルコボンドの完成】
そもそも「モノリシック:monolithic」 とは、「一枚板」、「統制された」または「画一主義的」などの意味をもつ英語 です。ドイツ語でいう「Monopol」やフランス語の「Monopole」も「独占的な…」という意味では、その語源の1部と なっており、その昔、我が国では日本専売公社のような独占業務を仕切っていた企業も指します。
話しが大筋から若干、逸れました。将来的にモノリシック構造のジルコニアは、物性および審美的有意性からも (一枚板)フルジルコニアとして臨床の予知性、確実性からも優れた材料といえる。
昨今のジルコニアを製作するためのディスクは、高透光性ディスクから既にレイヤリングを施したグラディエーショ を有するマルチレイヤーディスクが多く上市しています。
ただし高透光性で、さらにマルチレイヤーであるジルコニアは、曲げ強度が550〜900MPa程度なのです。
1000MPa以上のマルチレイヤージルコニアはATD Japan、松風や日本歯科商社のJDSジルコニアディスク等が 挙げられます。
ここでは高透光性でありながら、曲げ強度1019MPaを実現した松風のマルチレイヤーディスク 「ZRルーセントFA」を紹介しよう。
【予め滑らかに色移行するグラディエーションを有するマルチレイヤーディスク「ZRルーセントFA」】
【松風マルチレイヤーディスク「ZRルーセントFA」を用いたモノリシックジルコニアクラウン】
逆に、一昔前のジルコニア材は透光性に優れて無かったため、特に縁上マージンであれば、メタルセラミックスまで とは言はないまでも、歯頸部領域の明度コントロールに難がありました。 また、従来のジルコニア材はアルミナや高透光性ジルコニアと比較し、切端部の透明感も劣っていたのである。
しかし、オールセラミックスクラウンはメタルセラミックスクラウンと比較して、優れた審美性を示します。 下図は上下顎歯牙4、5部をプレスしたオールセラミックスクラウン、両顎6部をメタルセラミックスクラウンとしたが、 やはり歯頸部領域の明度にわずかな違いが生じたことを示している。
【上下顎第1,2小臼歯をプレスしたオールセラミックス、両顎第1大臼歯をメタルセラミックスにて回復】
もう1つの問題となり得ることは、支台歯が最近流行の「ファイバーポストコア」の場合である。 下図は上顎両中切歯をオールセラミックスで補綴したものの、ファイバーコアは透明性が高い。
そこで、補綴装置下部構造を透光性をオペークライナーなるもので遮蔽したものの、透明感や明度のコントロール が難しく若干ながら明度に違和感を感じました。 明度を落とさないことが最重要課題です。
上顎中切歯:オールセラミックスクラウン
上述したように、このジルコニアは高透光性であるが故に、色調を分析することは非常に難しいことを覚えておく 必要があります。 何故なら、高透光性ジルコニアは支台歯の状況にとりわけ大きく影響されてしまうからなのです。
そこで、松風から発売された「ダイカラ―ワックス」は、現状の支台歯色に合わせた擬似支台を製作でき、 支台歯に装着した状態で色調分析を行うことができるのです。
【ダイカラ―ワックスを用い、支台歯色に酷似させる】
下図左はジルコニアクラウン下にある A3シェードタブ(色見本)を中央で分割し、ジルコニアクラウンと重ね合わせた 図です。ここで色相、彩度が理解できるでしょう。
また、右図は色を全く用いないモノクロ画像ですが、明度のマッチングが明確に見てとれよう。 このようにして、色調補正を行なうことが大切です。
【色見本をジルコニアクラウン半分に重ね合わせることによって、色相、彩度そして明度が明らかになる】
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