マグネット付テレスコープデンチャー& ガルバーノテクニック |
●本症例は残った歯が1本しかなく、上顎レジリエンツテレスコープデンチャーで経過を観察する ことにしましたが、患者さんが残った歯でどうしても維持力を持たせたい!という要求がありました。 したがって、正確にはレジリエンツではないものの、上顎右第一大臼歯には ショックアブソーバー的要素を持つAGCガルバーノキャップで緩衝を有する 粘膜負担の(レジリエンツ)テレスコープデンチャーを選択しました。
しかしながら、上顎第一大臼歯とはいえ、残存歯1歯だけでは維持力を持たせることはできません。 そこで当該大臼歯にマグネットアタッチメントを装備させ、維持力回復を図ったケースです。
●ただし、デンチャーは必ず経過と共に、口腔内で沈み(低位し)ますから...... 通常、レジリエンツテレスコープデンチャーでは内冠頂面と外冠の間に約0.5mmの遊びを設けます。 そこで、内冠準備の電導性シルバーラック塗布の際、内冠頂面だけはシルバーラッカーを3度塗布し、 そこに緩衝を持たせました。
●先ずは、着脱方向を決定してマグフィットキーパー付き内冠をミリング加工、製作して、 電鋳工程の前準備をします。 内冠内はパターンレジンで満たし、延長した後に、銅線を瞬間接着剤で固定(上図左)し、 シルバーラックを塗布し、電導性にします(上図右)。 その後、ガルバーノマシンにて電鋳する訳です(下図左)。 すると、このAGCマイクロマシンでは、6時間でゴールドキャップができます(下図右)。 |
●そこで、マージン部をマイクロスコープ下で慎重にトリミングし、 テレスコーププライヤーで脱着します(下図左)。 撤去したゴールドキャップ内面には、未だ電導性シルバーラックが残っています(下図右)。 ここで、急いでこのシルバーラッカーをサンドブラストしてしまうことは、厳禁です。
●ゴールドキャップは柔らかいことから、 サンドブラスティングによるゴールドキャップ内にシルバーラックの「銀が拡散」してしまうからです。 銀は口腔内で変色し、1週間で真っ黒になってしまうのです。
ですから、硝酸中に浸漬し、銀を溶解することが非常に重要なのです。 |
●また、本症例ではマグネットアタッチメントを装備しています。 マグネットアタッチメントのマグネットは鉄(Fe)から成っていますから、硝酸で溶解されてしまいます。 そこで、この部分をワックスやパターンレジンで被覆してあげることを忘れないでください。
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●上図が完成した(レジリエンツもどきの)マグネットアタッチメント付きテレスコープデンチャーです。 |